フリーランスや副業で働く女性にとって、「安心して働ける環境づくり」は大切なテーマですよね。
その「安心」を支える制度として注目されたのが、2024年11月に施行されたフリーランス新法です。
その施行から約1年、リモートワーク実践スクール「リモラボ」が女性メンバー約900人に調査をおこなったところ、8割以上が「知らない」「ほとんど知らない」と回答。さらに3人に1人が発注元とのトラブルを経験していました。
法律ができても、現場にはまだ十分に浸透していない現状があるようです。
今回はそのデータとリアルな声から、フリーランス女子の「安心」と「リスク」を読み解きます。
調査目的と回答者データについて
リモートワーク実践スクール「リモラボ」のメンバーを対象に、以下の内容で実態調査をおこないました。
- 調査対象:リモラボメンバー911人(女性のみ)
- 調査実施期間:2025年9月16日〜2025年9月20日
- 調査機関:自社調査(インターネット)
3人に1人が経験、フリーランス女子の「困りごと」とは?
法律が整っても、「現場では思うようにいかない……」という声は少なくありません。
今回の調査では、実際に専業フリーランスや副業として働く女性の3人に1人(38.4%)が発注元とのトラブルを経験していることがわかりました。(図1)

内容を見てみると、「連絡が滞って業務に支障が出た」(29.9%)、「報酬の支払いが遅れた、未払いだった」(28.1%)、「契約内容が曖昧なまま進行した」(28.1%)が上位に。(図2)
制度で守られる項目が増えても、コミュニケーションと契約の両面に課題が残っているようです。

自由回答では、「条件が途中で下方修正された」「契約前に業務が始まってしまった」「無償作業を求められた」といった声も。中には、「途中で連絡が途絶えた」「納期ギリギリで無理な要望が続いた」「一度OKをもらった後に修正が重なった」など、心身の負担を感じたケースもありました。
「仕事を断りづらい」「相手に言いづらい」という気持ちも重なり、トラブルの根は深いもの。安心して働くには、まず自分の立場を守るための知識が欠かせないのかもしれません。
「最低賃金がある」は誤解?意外と知らないフリーランス新法
フリーランス新法の施行から約1年。安心感の一方で、その内容をきちんと理解している人はまだ少ないようです。
今回の調査ではその内容を「全く知らない」「ほとんど知らない」人が82.4%にのぼり、認知度の低さが明らかになりました。(図3)

理解度を探るため、調査では新法の具体的な内容に関する3つのクイズを出題。その回答から、リモラボメンバーの「リアルな理解度」が浮かび上がりました。
【クイズ1:フリーランス新法に記載されている内容として、適切なものはどれでしょう?(複数回答可)】
①取引条件を書面等で明示すること
②報酬を60日以内のできる限り早い日に支払うこと
③フリーランスの社会保険料を一部負担すること
④育児や介護との両立に配慮すること
⑤フリーランスに対するハラスメント行為についての相談に対応すること
⑥フリーランスに年次有給休暇を付与すること
⑦フリーランスの残業時間を管理すること
⑧募集情報を正確かつ的確に表示すること
⑨フリーランスに最低賃金を保証すること
※正解は①②④⑤⑧
「報酬の支払期日」(45.8%)や「育児・介護との両立支援」(41.6%)といった項目を定められていないと答えた人が半数以上。さらに、33.8%が「最低賃金保証がある」と誤解していました。(図4)

フリーランスは、発注元(クライアント)と対等な「事業者」として契約を結ぶため、労働基準法のような最低賃金の対象には含まれません。
「守られていると思っていた内容が、実は対象外だった」。そんな勘違いが、トラブルの温床になっているのかもしれませんね。
【クイズ2:フリーランスが契約書を交わす際、「発注者からの解除権」について、最も望ましい記載内容はどれでしょう?(単一回答)】
①発注者はいつでも自由に契約を解除できる
②発注者は、フリーランスが14日以内に連絡に応じなかった場合に限り、解除できる
③発注者は、業務の進行状況に応じて柔軟に解除できる
④発注者は、中途解約をする場合、30日前までに通知しなければならない
※正解は②
この問題では、76.0%が正解し、比較的正しい理解が進んでいました。(図5)収入の継続性に直結する項目であることから、多くの人が意識している様子がうかがえます。

一方で「いつでも解除できる」と誤答した人も2割以上おり、契約書の文言をよく確認せずに署名してしまうケースも少なくないようです。
「契約書は大切とわかっていても、実際には細かい内容を確認しづらい」「信頼関係を壊したくない」という気持ちを抱える人も多いもの。
一見難しそうに思える契約の確認も、知っておくだけでトラブルを防げる場面はたくさんあります。大きな安心のためにも、契約への意識をちょっとでも高めておきたいですね。
【クイズ3:フリーランスが業務で著作物を制作した場合、契約書で特に定めがないとき、著作権は誰に帰属するでしょう?(単一回答)】
①制作を依頼した発注者
②著作物を制作したフリーランス
③発注者とフリーランスの双方に自動的に共有される
④著作権法に基づき、国が管理する
⑤著作権は発生しない
※正解は②
この問題では約半数(43.4%)が誤答。特に26.9%が「著作権はクライアントのもの」と誤認しており、「自分がつくったものの権利」がどこにあるのかを正しく理解できていない人も多いことがわかりました。(図6)

成果物の著作権は、契約書で特に定めがない場合は制作したフリーランス本人に帰属します。仕事の成果を守るためにも、著作権に関する項目はクライアントとの間で認識を明確にしておくことが重要です。
制度が整っても、それを「知っている」か「知らない」かで守れる範囲は大きく変わります。法律が守ってくれる時代だからこそ、自分で自分を守る知識も欠かせませんね。
次の章では、その意識と学びへの姿勢に迫ります。
安心感の裏にある不安…97%が感じた「自分を守る知識」の必要性
新法の施行によって、「安心感が高まった」と答えた人は全体の48.6%。半数近くが「非常に高まった(6.6%)」「ある程度高まった(42.0%)」と答え、制度への期待が広がっていることがわかります。(図7)
一方で、「どちらとも言えない」が47.4%とほぼ同じ割合に。「安心したけれど、まだ不安もある」という複雑な本音が見えてきます。

さらに、「自分を守るための法律や契約の知識は重要だと思う」と答えた人は97.4%にのぼりました。(図8)そのうち「非常に重要」と答えた人が約9割を占めています。多くの女性が自己防衛の意識を強く持っていることがわかりますね。

法律が整っても、それを活かすのは私たち自身です。
「守られる安心」から「自分で守る安心」へ。そんな意識の変化が、今まさに始まっているのかもしれません。
まとめ
今回の調査から見えてきたのは、フリーランスとして働く多くの女性が「安心したい」と願いながらも、法律や契約の理解不足から思わぬリスクに直面している現実でした。
一方で、約97%の人が「自分を守るための知識が必要」と答えており、学びながら働くという意識は確実に広がっているといえます。
法律ができたことで、「守られる時代」にはなりました。
しかし、本当に必要なのは制度に頼るだけでなく、自分で理解し、自分で選んでいく力。それこそが、フリーランス女子の未来を支える本当の安心につながります。
リモラボは、そんな女性たちの学びと挑戦を応援するリモートワーク実践スクール。これからも、フリーランスや副業で働く女性たちが安心して自分らしく働けるよう、学びとつながりの場としてサポートしていきます。
働き方も知識も、自分らしくアップデートしながら。まずは「知ること」から一歩を踏み出してみませんか?









